うちは配達のお弁当屋です。
配達のお弁当は、衛生面にも気を配りながら、きちんと冷ましてからお届けしています。
その配達のお弁当を、冷めてもおいしく作ること。正直に言うと、これを「こだわり」と思ったことは、あまりないんです。弁当屋として、当たり前のことだと思ってやってきました。私も同じお弁当を食べます。自分が食べるんだから、おいしいものを食べたい。それだけの話です。
毎日食べるお弁当だから、価格を抑えることも、おいしさを諦めないことも、どちらも大切にしてきました。お昼ごはんが「仕方なく食べるもの」になってほしくない。おいしくないものを食べても、幸せじゃないですから。
冷めてもおいしいために、してきたこと
お米は、炊きたてではなく、冷めたときの味を一番にして選びました。五ツ星お米マイスターに「冷めてもおいしい」を条件にして、うちのお弁当に合うお米をブレンドしてもらっています。経緯は前に書きました。
出汁は、さば節などを合わせた独自の削り節と昆布で、基本は毎朝とっています。あえて上品すぎない、毎日のお弁当に合う出汁です(この話も以前書きました)。塩は天然塩、みりんは本みりん。化学調味料・添加物は、うちの厨房では使っていません。毎日食べていただくものだから、使うものは自分たちが納得できるものを選びたい。
揚げ物も、冷まし方や油の扱いを工夫しています。「冷めた唐揚げはこんなもの」とあきらめずに作っています。
ぜんぶ、冷めてから食べる人のための積み重ねです。
店頭に「できたて」という発想は、なかった
実は、以前の店頭販売でも、前もって作ったものをしっかり冷まして売っていました。配達と同じやり方です。できたてを提供するという発想が、うちにはむしろなかったんです。
変わったきっかけは、コロナでした。
コロナで、リモートワークで出社される方が減りました。売上を確保するために、Uber Eatsなどのデリバリーサービスを始めました。普段は仕込みをしている時間帯にフライヤーの油を入れておいて、注文が入ったら揚げる。揚げ物は朝だけだった、それまでの仕事とは違うやり方です。
注文が入ってから揚げて、できたてをお届けする。うちの仕事に、そういう形が加わりました。
そして店頭でも、できたてを出すようになりました。冷めてもおいしいお弁当を作ってきた店が、できたてを出したら、喜ばれるに決まってる。それぐらいの勢いで始めました。
配達のお弁当は、冷ましてから届けるのが仕事です。でも店頭なら、作ってからお客様の手に渡るまでが短い。作ってから手渡すまでの時間が短いぶん、揚げ物の衣の食感も感じてもらいやすい。電子レンジで温め直したものとは、また別のおいしさです。温かくはなっても、揚げたての衣とは違うからです。

そんなわけで、ここ3年ほど、店頭でもお弁当を売っています。平日のお昼だけです。メニューは、月曜のハンバーグ以外は揚げ物の日。唐揚げ、ヒレカツ、チキン南蛮、ミンチカツ。曜日ごとに変えている理由は、別の記事に書きました。

(写真は、木曜のチキン南蛮と月曜のハンバーグです。お皿に盛ったおかずの一例で、実際のお弁当とは盛り付けが違います。)
冷めてもおいしい店が、できたてを出せる
冷めてもおいしいように作るのが、うちの当たり前です。その当たり前の上で、店頭では、できたてに近いお弁当を手渡せる。
どちらが上という話ではありません。食べるまでの時間が違うだけで、同じ厨房で、同じ考え方で作るお弁当です。ただ、冷めてもおいしい弁当屋が、できたてを出せる。これは、ちょっといいことだと自分では思っています。
毎日のように買いに来てくださる方がいて、本当にありがたく思っています。ただ、近所でもまだ知られていないのが正直なところで、もっと多くの方に、店頭ならではのおいしさを知っていただきたいんです。
店頭は、平日の11時から12時30分まで。売り切れ次第の終了です。お昼にさっと食べられる日があれば、寄ってみてください。
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